今回は、経営のグローバル化に向けた機能軸強化のためのチェンジマネジメント、クロスボーダーアライアンス・M&A後のPMI支援等を手掛けている(株)野村総合研究所の田口芳昭さんの著書”なぜ日本企業は真のグローバル化ができないのか”を参考に、日本企業のグローバル化の課題を考えてみたいと思います。
”はじめに”の冒頭部分に、「海外グローバル企業と日本企業の違い」が記載されていますので、以下紹介します。
左側が”海外グローバル企業の経営のコンテクスト、右側がそれに対する”日本企業の経営のコンテクスト”です。この場合の日本企業は一般的な大企業、コンテクストは一般的な訳語である”文脈”というより、”背景””状態”くらいの意味合いでとらえていいと思います。
<海外グローバル企業> <日本企業>
*80/20ルール ⇔ 100点満点、品質至上主義
*シンプルに、絞って ⇔ 全体最適、バランス重視
*責任、権限 ⇔ 横串調整
*プレゼン、表現する能力 ⇔ 文書作成能力
*経済合理性、一気呵成 ⇔ 実行しやすさ、時間をかけて
*本気で ⇔ ポーズで
*スペシャリスト ⇔ ゼネラリスト
*多国籍 ⇔ 日本人
*形式知、IT重視 ⇔ 暗黙知、人重視
いかがでしょうか?一概にどちらが「良い・悪い」というものではありません。海外グローバル企業といっても、欧州と米国、欧州においても大陸と英国、大陸の中でも例えばドイツとイタリアの企業では差異が多いのが現実です。しかし、大きくくくるとこのような傾向がみられる、という意味では現状認識として納得できるのではないでしょうか?
*本気で、については、日本企業にはポーズというより、仕方なく”建前”として取り組む重要プロジェクトなどがあげられますね。
日本人の生真面目な気質なのか、とかく「完璧主義」になりがちになり、なかなか行動に移せない(リスクを考慮し過ぎて)傾向もありますが、一度軌道に乗れば、チーム力・組織の一体化の強みを発揮し、一糸乱れることなくゴールにたどりつく、という長所もあります。
私が特に感じるのは、組織というよりトップ(社長・経営陣)も含めた「個」の力の差です。例えば、外資系企業トップの「プレゼンテーション力」は”俳優か?!”と勘違いするほどの演技力を伴い、聴衆を圧倒するパワーとスキルを兼ね備えていることが多いです。多くは脚本があり、相当リハーサルをこなしているようですが。一方、日本企業のトップにありがちなのは、部下が作った文書をただ読み上げる、といったシーンです。残念ですね。
「海外事業・グローバルマネジメント」という大きく立ちはだかる壁をどのように乗り超えていくのか。簡単に答えが見つかるはずもなく、試行錯誤、トライ&エラーを繰り返しながら克服していくことしかないでしょう。まさに”本気度”が試されますね。
行政書士鈴木法務オフィス http://www.suzuki-kokusaihomeoffice.com